6. 体の潤滑油「電解質」の管理
電解質とは、血液や体液に溶けているミネラルのことです。ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、マグネシウムなどがあります。これらは神経伝達や筋肉の動きなど、生命維持に重要な働きをしており、体を正常に動かすための「潤滑油」のような存在です。健康な腎臓は、これらの電解質が常に適切な濃度になるよう、尿への排出量を精密にコントロールしています。
1. 最も注意すべき「カリウム」
透析患者さんが食事で最も厳しく制限を指導されるのが、このカリウムです。なぜでしょうか。
カリウムは主に心臓の筋肉を規則正しく動かすために非常に重要な役割を担っていますが、腎機能が低下すると、体の中からカリウムを排出できなくなり、血液中のカリウム濃度が異常に高くなってしまいます。これを「高カリウム血症」と呼びます。
血液中のカリウム濃度が少し高くなるだけでも、手足のしびれ、脱力感が現れます。
そして、非常に高くなると、致死的な不整脈を引き起こし、心臓が突然止まってしまう危険性があるのです。
これが、カリウム管理が非常に重要である最大の理由です。
◯危険な高カリウム血症を防ぐ、カリウムコントロールの三本柱
- 食事療法:カリウムを多く含む食品を避ける。野菜は茹でこぼしたり、水にさらしたりすることで、カリウムの含有量を減らすことができます。
- 薬物療法:食事療法だけではコントロールが難しい場合、腸の中でカリウムを捕まえて、便と一緒に排出するお薬(カリウム吸着薬)を使います。
- 透析療法:透析は、体内に溜まったカリウムを取り除く最も効果的な方法です。
◯その他の電解質について
カリウムやリン、カルシウムほど頻繁には話題になりませんが、他のミネラルも体の調子を整える上で大切です。
●マグネシウム
マグネシウムは、筋肉の収縮や神経の興奮を抑える働きがあります。
透析患者さんは、食事制限などの影響でマグネシウムが不足しがちです。
不足すると、足がつる(こむら返り)、不整脈、イライラなどの原因となることがあります。
逆に、マグネシウムを含む便秘薬(酸化マグネシウムなど)を使いすぎると、高マグネシウム血症となり、吐き気や筋力低下を起こすこともあるため注意が必要です。
●亜鉛
亜鉛は、味覚を感じる細胞(味蕾)の新陳代謝に不可欠なミネラルです。透析患者さんは亜鉛が不足しやすく、その結果として「味がしない」「何を食べても美味しくない」といった味覚障害が起こることがあります。また、皮膚の健康維持にも関わっており、不足すると皮膚炎やかゆみの原因になることもあります。このような症状がある場合、検査で亜鉛不足が確認されれば、亜鉛を補充するお薬が処方されます。
これらのミネラルは、直接命に関わることは少ないかもしれませんが、日々の生活の質(QOL)に大きく影響します。
「足がよくつる」「最近、食事が美味しくない」といった悩みがあれば、些細なことと思わずに、ぜひ医療スタッフに相談してみてください。
