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5. 糖尿病と共に透析治療を受ける方へ

[2026.05.06]

今や、透析導入の原因として最も多いのが「糖尿病性腎症」です。糖尿病を長く患い、血糖コントロールがうまくいかない状態が続くと、腎臓の細い血管が傷つき、腎機能が失われていきます。 糖尿病を合併している透析患者さんは、血糖の管理、そして特有の合併症の管理という、二つの側面からきめ細やかな治療が必要になります。

1. なぜ血糖コントロールが難しくなるのか

  • インスリンの分解場所の変化

    健康な状態では、インスリンの約半分は腎臓で分解されます。
    しかし、腎機能が低下すると、腎臓での分解ができなくなるため、注射したインスリンが体内に長く留まり、薬が効きすぎて低血糖を起こしやすくなります。
  • 経口血糖降下薬の制限

    飲み薬の多くは腎臓から排泄されるため、腎機能が低下した状態では使えないものが多くなります。安全に使える薬の種類が限られてきます。また低血糖リスクの高いものとそうでない薬剤があり、当院では安全性を考えて治療を進めていきます。

  • 透析によるブドウ糖の除去

    透析液にはブドウ糖が含まれていますが、血液中のブドウ糖濃度が高い場合は、透析によってある程度のブドウ糖が除去されます。これにより、透析後に血糖値が下がりすぎることがあります。

  • 食事制限の影響

    透析のための食事制限(カリウムやリンの制限)と、糖尿病の食事療法(カロリーや糖質の管理)を両立させるのは、非常に大変です。栄養状態が悪化し、血糖コントロールが不安定になることもあります。

     

 

 

2.特に注意すべき「低血糖」のリスク

透析患者さんの糖尿病治療で最も警戒すべきは「低血糖」です。 低血糖とは、血液中のブドウ糖濃度が異常に低くなった状態を指します。

<低血糖の主な症状>

初期症状:強い空腹感、冷や汗、手足の震え、動悸、不安感
進行した場合:意識がもうろうとする、ろれつが回らない、異常な行動
重症の場合:痙攣(けいれん)、昏睡

透析患者さんは、先述の理由から低血糖を起こしやすいです。
また、自律神経障害を合併していると、冷や汗などの典型的な初期症状(警告症状)が出にくく、自覚症状がないまま突然意識障害に陥ることもあり、非常に危険です。

<低血糖を防ぐために>

  • 特に透析前の食事を抜いたり、極端に量を減らしたりしない。
  • 体調が悪い時(食事が摂れない時など)の薬の調整について、事前に医師に確認しておく。
  • 常にブドウ糖や砂糖、ジュースなどを携帯し、おかしいと感じたらすぐに対処する。

といった対策が重要です。ご家族も、低血糖の症状と対処法について知っておくことが大切です。

 

3. インスリンと経口薬の使い分け


透析患者さんの血糖コントロールでは、安全性を最優先し、多くの場合でインスリン注射が治療の中心となります。
インスリンは、注射する量やタイミングを細かく調整しやすく、低血糖のリスクを管理しやすいためです。
一部の経口血糖降下薬(飲み薬)は、透析患者さんでも安全に使えるものが登場しており、インスリンと併用されたり、インスリンが不要な軽症の患者さんに使われたりします。どの薬を選択するかは、患者さんの血糖値のパターン、食事の状況、合併症の有無などを総合的に判断して決定されます。

 

4. 糖尿病特有の合併症と、追加されるお薬


糖尿病は、腎症以外にも全身に様々な合併症を引き起こします。これらの管理のために、さらに薬が追加されることがあります。

<合併症>

  • 網膜症

    目の網膜の血管が傷つき、視力低下や失明に至る可能性があります。定期的な眼科受診が不可欠です。進行を防ぐための治療が行われます。
  • 神経障害

    手足のしびれ、痛み、感覚の麻痺、立ちくらみ、便秘・下痢など、様々な症状が現れます。特に足の感覚が鈍くなると、小さな傷や靴擦れに気づかず、潰瘍や壊疽(えそ)に進行してしまう「足病変」のリスクが高まります。しびれや痛みを和らげるためのビタミン剤や痛み止めが処方されることがあります。
  • 動脈硬化

    糖尿病は、心筋梗塞や脳梗塞、末梢動脈疾患(足の血流障害)といった、太い血管の動脈硬化を強力に促進します。これを予防・治療するために、コレステロールを下げる薬や、血液をサラサラにする薬(抗血小板薬)などが使われます。

 

 

糖尿病を持つ透析患者さんは、腎臓の専門医だけでなく、糖尿病や眼科、循環器科など、多くの専門家と連携しながら、全身を総合的に管理していく必要があります。

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